小説」カテゴリーアーカイブ

ぷらねたりあん・れびゅー


 Planetarian発売からもうすぐ二ヶ月も経とうとしている今頃にレビューなんて時期はずしだとは思うのだが。何故か自分とこのメインPCにインストールができなくて、読むの自体が遅れてしまっていたのだ。
 まあそんなわけで、レビュー。
 触れ込み通り、SFである。SFというと最近はえらく幅が広く捉えられてしまっているようで、中にはAIRがSFだとか言い出す人までいる世の中だが。Planetarianはそういうのではなく、正当派のScience Fictionである。
 大まかな内容は、世界大戦後、核と細菌兵器によって汚染された世界で、旧文明の遺物を探し回ることを生業とする「屑屋」が、侵入した廃棄都市で、ロボットのプラネタリウム解説員「ゆめみ」と出会い、彼がそれまで見たことのない星空を見せられる・・・・というものである。
 悲愴的な世界観が示すように、重い内容を含んだストーリー展開である。
 SF、特に長編SFにおいてはテーマ性というのが非常に重要であり、それ故に時として内容が政治的な意味合いを帯びてしまうことすら少なくないものであるが。本作に於いても、そのテーマ性というものは十分に見ることが出来る。
 内容についての詳細な説明は省くが、ロボットと人間の関係、技術の発達と文明の行く末、そして星を見る・見せるということの意味。そういった比較的重いテーマに対して、作者涼元祐一氏なりの取り組みを込めていると言えるだろう。
 ただ一つ難を言えば、複数のテーマを一つの作品に詰め込んでしまっているためか、その訴えようとする事が見えにくいということが言える。
 特に主人公の「屑屋」の心理描写があまり多くないために、その行動に時として不可解なものを感じることもある。これは、ダウンロード販売故に容量に厳しい条件が付き、文章の内容として心理描写よりも情景描写を優先せざるを得なかったということもあるのだろう。とはいえ、それ故に読み手に書き手からのメッセージが伝わらないことがあれば、それは悲しいことである。
 また、細かいことであるが。ラストで「ゆめみ」が、バッテリー残量が殆ど無い状態で、ホログラム投影を行うシーンがあるのだが。ホログラム投影というのは大電力を消費するものであり、いつバッテリーが切れるかわからない状態でそんな行動を取るのは、ちょっと理不尽ではないかと感じた。
 SFだからといって必ずしも科学的考察が完璧である必要はないのだが。直前の戦闘シーンの描写が克明なだけに、違和感が大きく、残念だった。
 まあ、なんであるにせよ。決して悪い作品ではない。千円という価格も、ハードカバーの新刊を買うことを考えれば決して高いものではない。SFが好きな人になら、一読の価値はあるだろう。
 ところで、某葉鍵板で知ったのだが、“Planetarian”が、日本プラネタリウム協会のWebページで紹介されているようだ(ココ)。
 従来のゲーム作品とは一線を画すとは言え、Key作品が、学術関係者などにも知れ渡り、それが真っ当なWebページでの紹介を受けるようになる事自体、Keyというものが社会に受け入れられたことの一つの現れといえるのではないだろうか。


blogランキング、1日1クリック
-----
全国の派遣、転職、アルバイト情報 – 楽天仕事市場


更新履歴_あなたは誰ですか


 11/18に「妙な夢」についての記事を書いたが。その夢をアレンジして、短編を一本書いてみた。
 http://kouyaxatosi.info/novel/anata.htm
 夢がモチーフという意味では、つげ義春の「ねじ式」と同じであるが。かなりアレンジを加えたので、「ねじ式」よりはわかりやすいと思う。
 読みやすさのためにアレンジしたというよりは、夢そのままだと実在の人物との事を書く事になってちょっとマズいからなのだが。
 「ねじ式」と言えば。健康一番地さんの所の記事で「医者はどこだ」という台詞が出てきていたので、てっきり「ねじ式」の有名な台詞の事だと思っていたら。ブラックジャックの第1回のサブタイトルだった。
 こういうところで、趣味趣向が表れてくる。
ねじ式(つげ 義春 (著)) 小学館文庫 ¥610 (税込)
blogランキング、1日1クリック
-----


直子の硬筆


 はっきり言って、年上の女性は好きである。大好きといって全く差し支えない。なのだが、実際年上の女性と知り合う機会は殆ど無い。
 「人のセックスを笑うな」という本が、広告に載っていた。今年の文芸賞作品らしい。アオリが「19歳のオレと39歳のユリ」云々。筆者は山崎ナオコーラ。即、買った。ペンネームに惹かれたと言うよりは、39歳に惹かれて。
 読んでみた。設定は、CLAMPの「ちょびっツ」によく似ている。途中までは、「え、これで賞取れるの?」等と思ったりもしたが、読後感は非常に良かった。その辺で賞を取ったのだろうか。それとナオコーラ。
 でも、19歳と39歳、というアオリが抱かせる期待、それに応えるものは無かった。そもそも本文中で、「オレ」の年齢22歳になってるし。