リトバス2期Reflain~第9話~感想~
アニメスタッフの方達にとって、謙吾はイチオシのキャラなのかなーと思うのですが。今回はそのイチオシしたいという意気込みを感じさせる回でした。
欲を言えば、あと12分、せめて10分の尺が欲しかった、と。ええ、もちろん無理難題なのでしょう、そんな中途半端な尺。ですが、むしろその無念さが伝わってくるのです。
今期のReflain、唯湖編では、尺の無さを逆手に取った見事なストーリー展開を見せてくれましたが、今回の謙吾編もそれに近しいものを感じます。尺が無い事への無念さ。それを、謙吾がずっと抱き続けている無念さと見事に重ね合わせているような、そんな気がするのです。
アニメではやらなかったですが、原作だと鈴ルートでこんなシーンがあります。鈴が戻って来て理樹が恭介に抗議したいと言ったとき、謙吾は一日だけ待って欲しいと言うのです。ですが理樹は、鈴は今泣いてるんだとだだをこね、結局恭介と不利な条件で対峙した挙げ句不正な手段で屈服させられてしまったのです。もし一日待ったら事態はどう変わっていたのか、それは結局不明です。ですが、この一日があれば、という思いを、もしかしたら謙吾はずっと抱き続けていたのかも知れません。
もっと時間があれば。そこがかぶって見えるのです。
暗い部屋で恭介をなじる謙吾。不正な手段で勝ちを取った挙げ句引き籠もっているのですから、そりゃあ激おこぷんぷん丸でしょう。ですが一方で、理樹を守り切れない非力な自分への怒りも内心あるのではないか。そんなふうに思いました。自業自得だ、ブーメランのようにその言葉を吐いているのでは無いでしょうか。
タイトルでは最強の男となっている謙吾。実際強いし、たいがいの事はこなす人ですが。一方で決して万能では無いのです。少なくとも、恭介に比べて。
複数の事を同時にこなすなんて器用な真似はできない。剣道なら剣道、野球なら野球、そうやって一筋に打ち込む事しか出来ないんですね。もちろんそれが悪いわけでは無いのですが、彼は結構気にしているようです。何故なら、遊びながら結果を出すなんて離れ業を平然とやってのける恭介という存在が、目の前にいるから。
かといって、理樹のように恭介恭介と無条件に甘える事も出来ない。真人のように、鈴に邪険にされても友情出来るような強さも無い。弱っちいくせに平然と保護者面できる鈴のような厚かましさも無い。なまじ強いが故に、そういうのを気にしているのでは無いでしょうか。
コンプレックスの塊なんですね、謙吾さんというのは。
そんな謙吾に、千載一遇のチャンスがやってきたのです。新メンバー含めみんなで決めたルールを恭介が踏みにじり、かってに暴走し始めた。謙吾はきっとこう思ったのでしょう、恭介に代わって、理樹鈴の保護者になるチャンスだと。どのみち恭介は間違えてるんです。バックで小毬たちも支援してくれてます。絶対に勝てる、そう思っていたのでしょう。
謙吾にとっての誤算は、理樹がもう謙吾謙吾と甘える必要が無くなっていたこと、でしょうか。それに気づいたとき謙吾は、結局俺は何がしたかったんだと涙するのです。
さて。では謙吾は、一体何がしたかったのか。言葉通り、ただ遊びたかった、ということなんでしょうけど。前述のように恭介へのコンプレックスがずっとそれを邪魔してきたのですね。それだけでは無いのでしょうけど、主に、って事で。
その恭介への拭いがたいコンプレックスが生まれた原因となった、出会いのエピソード。アニメではさらーっと流されてしまいましたが、原作ではこういう話でした。
地元の英雄になった宮沢謙吾という奴は朝から晩まで剣道ばかりしている。きっと親に拘束されて辛い目にあっているんだ、俺達が解放してやろう! そう意気込んだ恭介少年は道場破りを試みますが、謙吾の父親にあっさりのされてしまう。しかし謙吾の父親に勝ち目のない戦いを何度も挑み続ける恭介に、とうとう父親は折れて、というよりむしろ最初からそうするつもりだったのでしょう、倒れてしまいます。その姿を見た謙吾少年は、しゃあねえ付き合ってやるかとばかりに、恭介達の仲間になるのです。
この時点から、もう謙吾の恭介に対するコンプレックスは芽生えているのです。どう考えても遊び半分で自分を助けに来ているのに、その姿は真剣そのもの。何でこんな事が出来るのか、と。
恭介みたいな力が欲しい。恭介みたいになりたい。謙吾もまた、ずっとそう思っていたのですね。
でも。実際にその力を手に入れたのは謙吾では無く、彼がまさに守ろうとしていた理樹の方だったのです。
アニメでは今後の展開になるのであまり深くは書きませんが、最終的に理樹が謙吾を助ける形になってしまうのですね。でも謙吾は、理樹に助けられてしまうそんな弱い自分を、受け入れることが出来たのです。
そして。謙吾自身気づいているかどうかわかりませんが、これによって実は、謙吾はようやく恭介を超えることが出来たんですね。恭介はまだ、理樹と鈴に助けられる自分を受け入れられていませんから。
さて。謙吾・恭介・理樹の関係ばかり書いてしまいましたが。いや、三角関係は麻枝シナリオの基本ですから、ある意味しょうがないんですけど。かと言って鈴と真人を無視するわけにも行かないでしょう。この二人は今回何を言っているでしょうか。
鈴「双子の片割れが変装してる」
真人「実は60歳」
鈴の台詞は明らかに佳奈多のことですね。脈絡は何ら無いけど。しかしそうなると真人の台詞は…あーちゃん先輩!? おや誰か来たようだ、居留守居留守。
それはいいとして。鈴の病状は、だいぶ治癒したようです。空から幻聴が聞こえてくる辺り、まだ完治はしていないようですが。うん、ここの部分ね、男連中の台詞が無ければ、別世界で待機している女の子達からの応援、って解釈できたんだけどね…。
て言うか、理樹も鈴も女の子メンバーのこと思い出してるのに、姿が見えないんだよねえ。介入も干渉も無いし。小毬ですら。
古式さんは出てきてるのにねえ。って、これは謙吾の回想か。そういえば今更だけど、古式さんは何であそこにいたんでしょうねえ。恭介に操られていた、って説が有力らしいけど、でも恭介と古式さんって接点無いよね。え? 操るのに接点とか特に必要無いの?
でも、古式さんと直接接点があるといったら、謙吾以外だと運動部会のとりまとめやってる佳奈多ぐらいなんだよねえ。その佳奈多自身、未だに何者なのかって論争に決着がついていないんだけど。城桐先生は謎を解く鍵は全て書いたって言ってるけど、結局誰も解明できていないという、フェルマーの大定理状態。
謙吾・古式・佳奈多の3人の関係は、想像すると二次創作欲をかき立てられますけどね。謙吾2+古式2=佳奈多2を満たす整数は存在するか。
そっか、全員助けることを諦めさせるという一点に於いては、恭介と佳奈多って利害が一致するんだな…。
と、ネタバレ注意、危ない危ない。
さて。次回はepisode恭介に該当する話なのかな? 今期は13話で終わりだから
10話:恭介
11話:理樹
12話:鈴
13話:最終回
こんな感じか。…んー、駆け足だなあ。この空を駆け抜けろとは言ってるけどさ。
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