先日9/7に、沖縄県内市町村の首長・議会選挙(通称沖縄統一地方選、共産党流の言い方だといっせい地方選)が行われた。結果の詳細は細かくは語らないが、11月の沖縄県知事選の行方を占うという意味では、”翁長陣営に若干の分はあるものの、決して見通しは甘くは無い”結果だったと言えるだろう。
知事選の前にまだ2つ、うるま市議選と豊見城市長選がある。とりわけ市長をどれだけ押さえているかは沖縄政界では大変重要視されるため、豊見城市長選を取れるかどうかが知事選勝敗の大きな鍵になる。
豊見城市長選の投票日は10/12は、告示は一週間前だから10/5。もう1ヶ月切ってしまっている。
こんな時期になるまで記事を書くのが遅れてしまったのが正直自分としては痛いのだが、まあここで言い訳をしてもしょうがない。
沖縄統一地方選の結果から見えてくるのは、”辺野古”の問題は大きな争点とはいえども、決してそれだけで勝てるような話では無い、という事だ。特に名護から遠い南部であれば、その傾向は顕著だろう。
では辺野古が争点にならない豊見城市長選は勝てないかといったら、そうでもない。この半年弱の間、現市長のBLOGや豊見城市関連の文献に目を通すなどし、また7月に帰沖した際には多少ではあるが豊見城の町を巡ってみたりもした。
結果自分なりに見えてきた問題点が幾つかある。とりあえず列挙。
1.保育、育児、学校教育に対する現市長の姿勢の問題
2.交通政策を含む町作りの視点が現市長には欠如している
3.公契約条例すら未だに制定されていない、労働政策への現市長の無策無関心ぶり
以上3つが大きな柱になる。
項番3に関しては、これはもう自民党市政共通のあるあるレベルの問題なので、今更深くは語らない。”公契約条例”でググって貰った方が早い。
なので、この記事では1と2を中心に記す。
1.保育、育児、学校教育に対する現市長の姿勢の問題
まず項番1の、保育教育の問題。
近年大きな問題になっているから関心の高い人はよく知っていると思うが、沖縄県の待機児童の多さは東京都に次ぐ全国2位に上っている。算定方法の違いという問題もあるが、沖縄県内の待機児童が多いことは、友人に子供のいる人だとか保育関連の仕事やってる人がいれば、もう常識レベルだろう。
中でも深刻なのは、那覇市を中心とする那覇都市圏である。都市圏で保育施設が不足しているのは、全国どこでも共通している。それでどこも頭を悩ませていて、民主党系の横浜市長と社民党系の世田谷区長が喧嘩する事態になったりしているわけだ。
那覇市でもこの問題を解決しようといろいろ試みが行われていて、現市長の翁長雄志氏が民間委託をベースに保育施設を増やそうとして共産党が保育環境の劣化を問題視して対立する、という事もあった。(この両者が今回知事戦で手を組むとは、なんとも不思議な歴史の巡り合わせだが。)
さて。では、那覇都市圏第3の都市である豊見城市はどうか。
いろいろ探してみたのだが、「待機児童は対策します」というお題目が見つかるぐらいで、具体的に何をしたとか何をするとか、一切書かれていない。
豊見城と言ったら、沖縄県内では我々の世代に一番人気のある街である。ガチで子育て世代だ。子供がいないわけが無い。で、豊見城の施設とか定員調べてみると、はっきり言って少ない。足りるわけが無い。保育所どころか小学校すら足りてねえんじゃねえのかこれ、レベルである。
ところが、現市長はこれに何らの対策も打っていない。高度エリート教育とかいう、全く的外れな政策をぶち上げている有様である。
高度エリート教育云々というのは、少子化で人口自然減で子供のいる家庭を奪い合いしないといけないような自治体が、人口社会増に持って行くためにうちに来ればいい教育を受けられますよと魅力作りのためにやるような性質のものである。
まあ、それ自体が悪だとまでは言わないが。それ以前に、人口が自然増な上に社会増も上積みされてる豊見城ではそもそも保育所には入れない学校は人が溢れてるという状況なのに、高度教育もへったくれも無い。
現状認識しとんのかと。新人ならまだいざ知らず、4年も市長やってて。
さらに、こんなアホなことも言っている。
「給食費無料化4千万円あれば2億の補助事業が出来る」
そもそも給食費無料化に本当に4千万円も必要か? という話もあるのだけど。とりあえずそれは脇に置くとして。
補助事業?? 補助事業って要するに起債ですよね。建設起債。保育所や小中学校の増設のことですか? でもこの市長、そういう施設増やすとは一言も言ってないんですよね。不思議なくらい、一言も。
で、どうもこの人、そういう保育教育以外のことにお金を使いたがっているらしい。それとも関連してくるのが、項番2。
2.交通政策を含む町作りの視点が現市長には欠如している
7月に帰沖した際に、豊崎の辺りを歩いてみた。いつも沖縄帰ると、とみとんでそば食ってるので今回もそうしただけなのだが、夏場に帰ったのは初めてだったので、クソ暑かった。まあそれはどうでもいい。
ちょうどその日に、道の駅でマンゴーの安売りをやっていて、凄い人だかりができていた。その辺を歩いてみてわかったのだが、その道の駅から西側の海岸方向は、食品関連の工場が建ちならんでいることを知った。そして豊崎の陸側は、意外なことに広大な農業地帯になっている。
陸側の第1次産業の農業地区。海側の第2次産業──食品工業地区。その間に挟まれて、農産品や加工品を売る商業地区──第3次産業。まさに典型的な、”第6次産業”の発想に基づいた町作りを目指していた、といえる。
そう、「いた」なのだ。過去形なのである。
道の駅周辺に、「豊崎にMICE誘致」というのぼりがいっぱい立っていた。工場と道の駅に接する形で広大な空き地があったから、多分そこに誘致したいのだろう。
MICEとはなんぞや、と、自分でもあんまりよく理解していなかったのだが。どうやら東京の有明や名古屋の白鳥みたいな、レセプションホールやホテルが集積する地区を沖縄にも作ろう、という話らしい。ちなみに補足しとくと、大阪の咲州は大コケして大きなビルが不良債権化して大阪府庁として使わざるをえない事態に追い込まれている。
まあ、沖縄にそのMICEとやらを作るかどうかの是非はともかく。豊崎がその適地か? というと、甚だ疑問である。少なくとも、第6次産業をベースにした町作り、という発想からは完全に外れる。空き地もギリでレセプションホールが作れる程度で、大して広くない。
それでも、県の最終候補地選定で、西原町と並んで残っているらしい。相当熱心に誘致しているのだろう。
で、改めて言うと。これを誘致して一体何がしたいんだと。
「とにかくハコモノ作れば経済が潤う」とかいうお花畑思考なのか。
はたまた、現市長がえらくご執心のLRT敷設のための材料にしたいのか。MICEを豊崎に作れば、輸送機関が必要だということでゆいレールの赤嶺駅から豊崎までLRTを敷設するカネを引っ張ってこれる、とか考えているのかもしれない。
ちなみにLRTというとなんかかっこよく聞こえるが、要するに低床の路面電車である。成功例としてよく富山や広島が上げられるが、どちらも既存の鉄道路線をLRT化したためにうまく行っている事例であり、新規に鉄路を敷設してわざわざ輸送力の低いLRTを走らせるメリットなど、皆無である。
まあ、さすがにそれは言われんでもわかっているのだろう、具体的な路線なんかには言及していないけど。
とにかく、豊崎を一体どういう町にしたいのか、現市長の発言や施策からは何も見えてこない。
さらに言えば、東部の方に関してはもう何も言及していないに等しい。那覇空港自動車道の活用とか言ってるけど、人口密度これからもどんどん上がってくのに、このまま自動車社会を続けるつもりかと。
といったところで。これに項番3
3.公契約条例すら未だに制定されていない、労働政策への現市長の無策無関心ぶり
を加えて、とにかく無為無策な市長だなあと。正直呆れ果ててるわけです。
豊見城市長選は、今のところ現職の他に大城氏という人が出馬表明しているようです。
参考までに
沖縄タイムス:「大城氏が出馬表明 豊見城市長選」
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=65834