安部総理閣下や、年金・国保や経済格差や沖縄の問題よりも、教育を選挙の争点にしたいご意向なようなので、その辺も踏まえつつ、いつもの個人政治評論をば。
ということで。先月いつの間にか成立しちまったらしい、教員免許更新制度の為の法律。もう成立しちまったので、今更止めるのが至難の業なんだが。そもそも、止める止めない以前に、この制度の概要がよくわからない。
「更新」って、具体的にどういう「更新」内容になるのかよくわからないし、何のためにやるのかもわからない。
まず、この段階で既に問題なんだけどね。教育という、国の機関政策に関わる重要事項の改正を、国民がよくわかってない(おごった言い方かもしれないが、荒野草途伸は一般的平均日本国民よりは、時事問題には精通しているとの自負がある。その荒野草途伸がわかっていないのだから、たぶん一次当事者の教員関係者以外は全然わかってないだろう)、この時点で既に大問題なわけだ。
さらに。ここからは、政策の内容がよくわかっていないので、伝聞と憶測混じりで話すが。聞くところに依ると、「教員の質を維持するために」数年ごとに30時間の講習を受けさせて、合格したら免許維持、という制度になるらしい。
さて。まずそんな制度に、実効性があるだろうか?というのが自分の中には疑問としてある。というのも、30時間の講習とはいうが、それは運転免許の更新みたいにビデオ見て終わりとか、そんな生やさしいものではないだろう。(むしろ、そんなのを30時間もやるんだったら、ただの金と時間の無駄である)。おそらくは、大学、否大学院レベルの「授業」を受けさせることになると思う。
そうなると。30時間と一口に言っても、拘束時間は30時間では済まない。予習復習含めてだいたい倍の60時間が、プライベートから削られることになるだろう。
60時間。7.5日分=1週間半の標準労働に匹敵する時間だ。こんな時間を、数年おきに確保していかなければならないのだ。おそらくは、無給で。
「教員はヒマだ」と思いこんでいる人間が世の中には多いが、実際のところそんなヒマ教員は数えるほどで、特に優秀な教員ほど、寝る間もないくらい忙しいのが現実だ。そんな彼らに、この上こんな時間拘束を強要するというのか。それとも、その分の時間確保=労働量軽減のために、人を増員するとでも言うのか? 増やすどころか、コスト削減とか言ってどんどん教員の頭数を減らしているこのご時世だというのに。
さらに言えば。民間人の免許保有者の問題がある。
個人的な意見だが、荒野草途伸は民間人からの教員登用は、どんどん進めるべきだと思っている。学校外部の経験、実社会の経験を積極的に教育の場に生かしていくべきだと思うし、それに社会経験を持った教師のいう言葉には、やはり重みがあるからだ。
私の友人で、教員になることを前提に、その前段階として経験を積むために、わざわざネットワーク・エンジニアになった男がいる。彼は今、正規採用の際に校長から指名を受けるくらい評価を受けているらしい。まあ、彼のことはいずれ詳しく話そう。
さて。民間人登用といっても、結局教員免許が必要なことには変わりない。普通は大学在学中にとって、それをそのまま持ちっぱなしにして、何年かしたら教員採用試験を受けることになるのだが。
ここで、免許更新制度が導入されたら、これはどうなってしまうのか?
常識的に言って、民間人は忙しい。公務員と比べるのはいろいろアレなので、とにかく忙しいんだとだけ言っておこう。裁判員制度ですら絶対断るなんて言い出す人間が後を絶たないくらいのレベルだ。
そんな人間に、教員免許の更新講習を課す。1週間半も。無理だ。普通に、夏休みのレベルも超えてるし。たいがいは業務と関係ないから、業務命令になるとも思えない。
つまり。民間人は、教員免許の更新が、出来ないのだ。
これはすなわち、民間人が教員に転職することは、今後非常に難しくなる、ということを意味する。
これらの問題は、教育にど素人で教員免許すら持っていない荒野草途伸ですら思いつくことなのだが。こういう事について、国会は十分な議論をしたのだろうか? 否、していないだろう。与党の強引な国会運営で、流れ作業のごとく法案通過マシーンにかけて成立させてしまったのだから。
国家政策の基本たる教育制度で、ろくな議論も精査もないまま、制度の改変をしてしまう。これはいったい、どういうつもりなのか。
この教育問題に限らない。安部内閣が成立してからというもの、あまりにも稚拙で拙速な制度改革・法案成立が目につく。
彼ら自民党は「これこそが安部政権の成果」と吹聴するが、私に言わせれば「こんなやっつけ仕事ばっかしやがって、何が成果か」と、むしろ憤慨したくなる気分である。
しかも、何か問題が発生するたびに打ち出してくる、泥縄的な対策の数々。SEやってる人間なら誰でもわかったと思うが、自民党の言う「一年で全データを突合完了」なんて、無理に決まってるのだ。しかも、泥縄ならいざ知らず、まるで見当違いの対策、例えば「年金ICカード」を導入して云々。それに一体いくらのカネと手間と時間がかかって、そしてそれが一体、今回の問題の何の役に立つんですか?と。
ただの思いつきですか?それとも、騒動を逆手にとって新たな利権の発掘を狙いましたか?
冗談じゃない。国家制度や法律は、おもちゃじゃない。それが重要な問題であるほど、例え時間をかけてでもきちんと調査し設計し、時には後戻りすら辞さない覚悟で作り上げていかねばならないものなのだ。何でもかんでも出しゃいいんじゃない。議論して、良質なものを作り上げていかねばならんのだ。その為の民主議会ではないか。
そういう自覚が、彼ら与党議員にあるのだろうか? 政権を担当しているのだという、自覚と責任を持っているつもりなのだろうか?
問題は少し異なるが、先頃、アメリカの核使用を容認するかのような発言をして辞任した防衛相がいた。これもまた、自分自身の立場を自覚していないが故に出た発言だろう。発言の中身云々より、こういう時期にこういう発言をしてしまうこと自体が、問題なのだ。
任命した安部首相の責任はもちろんあるが、それ以上に、所属する自民党の問題がより大きいと私は考える。こんな議員を、防衛相という重要ポストにおいておかねばならなかった。今回限りではない。2回も、3回も、同じような問題ばかり起きているではないか。
そこまで、自由民主党は人材に枯渇しているのか。政権の一部を担える、そんな人間が、今の自民党にはいないということなのか。
なれば、私はこう結論づけざるを得まい。
自由民主党に、もはや政権担当能力など皆無である、と。
率直な話、民主党や共産党の方が、まだ、政権担当能力があるように見える。これはひいき目ではなく、純粋に比較の上で。「やむを得ず、彼らに任せる選択肢もあるんじゃない(そうした方がいいんじゃない?)」という話だ。
まあ、今回の参院選だけでは、政権は変わらないことにはなってるんだけど。
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政権担当能力
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