沖縄県知事選2006


 11月に沖縄県知事選があるのだが、その野党側の候補者選考が崩壊し、分裂選挙になってしまう公算が強くなったようだ。
野党人選枠組み解消/県知事選(沖縄タイムス)
 経緯としては。沖縄県知事選では長らくは自民以外の全政党が「革新統一」ということで統一候補を立て、過去に屋良・大田と二人の知事を出すことに成功してきた。この取り纏めをしてきたのが、社大党(沖縄社会大衆党)である。
 ところが前回4年前の知事選で公明党が離反して保守陣営に走り、さらに社民党と共産党が組織的対立感情からそれぞれの系列候補の擁立を主張して譲らず、復帰以来30年続いた革新統一は崩壊してしまった。しかも現職の稲嶺知事は県民の支持を得ており、圧倒的な得票で再選された。
 その後、社大党の奔走によって何とか革新陣営間の関係修復が成り、2004年の参院選では社大党県議だった糸数慶子氏を統一候補として擁立し、当選を果たした。
 さらに2005年の衆院選で自民党衆院議員だった下地幹郎氏が党中央の公明党候補推薦の方針に反発して沖縄1区から無所属で出馬、公明・共産の両現職と争って当選する。その後下地氏は、県内の非自民保守勢力の結集を掲げて政治団体「そうぞう」を旗揚げ。地方議員300人を集める1大勢力を率いて、自民党県連と対立するようになった。(参考:2005年9月14日付記事
 下地氏は当初、「自民でも革新でもない、沖縄の第3政治勢力を築く」とし、民主党との連携を探る一方で社民・共産といった革新勢力とは一線を画す方針を示していた。だが2006年1月の名護市長選で、革新勢力がそうぞう系の候補に乗ったことで、協調路線に方針転換した。
 この名護市長選は結局自民・公明が推す候補に敗れたが、その後6月に行われた沖縄市長選で、社民党系の元副知事を野党統一候補として擁立し、勝利した。これにより、野党統一の機運は一気に高まった。
 これに先立ち、野党勢力は社大党の呼びかけで11月に行われる知事選で統一候補を立てるべく、人選会議を結成していた。折から、稲嶺知事が今期限りでの引退表明をし、しかし保守陣営は後継候補を絞れずにいた。加えて沖縄市長選で非自民共闘が成功したことで、知事選では野党に勝機有りという風潮が強まっていた。
 ところが、人選会議は紛糾。当初最有力視されていた宜野湾市長の伊波洋一氏(独立革新系)が早々に立候補辞退を表明。社民・沖縄自由連合が提案する糸数参院議員、共産提案の山内徳信氏(大田県政での出納長で、元読谷村長)、そうぞうの下地代議士の3人に絞られた。そうぞうは当初浦添市長の儀間光男氏の擁立を模索していたが、儀間氏が辞退し失敗に終わっている。
 だが糸数氏は国政に専念したいという理由で立候補を固辞。いったんは山内・下地の両氏に候補が絞られた。だがここで両者とも降りる気配を見せず、人選は膠着状態となった。
 背景に両者をそれぞれ支持する共産・そうぞうの政治スタンスの違いがあり、どちらかでの一本化は困難と見た民主党が再度、糸数氏での一本化を提案。糸数氏が党唯一の国会議員である社大党が難色を示すが、共産・そうぞう両党が糸数氏なら乗るという姿勢を見せたため、本人の了解を条件に承諾した。
 だが、結局当の糸数氏や糸数後援会の了解は得られず、結果「統一候補の擁立は困難」ということで人選会議は解散となってしまった、というのが昨日までの動きである。
 さて。ここで荒野草途伸(共産支持)の個人的な意見を述べさせて貰えば。
 「現職の稲嶺知事が高齢を理由に引退するのに、同い年の山内氏が出たって、勝てないんじゃないの?」ということである。勝つ見込みがある選挙なのに、敢えて勝てない選挙をしたって意味がない。それに近年の沖縄の有権者は、運動家よりも経済に明るい人間を選びたがる傾向がある。だからここは、下地氏で一本化すべきだったのではないだろうか?
 確かに下地氏は元自民党で、共産党とは政策上の隔たりが大きい。が、沖縄の話ではないのだが共産党はかつて京都府知事選に吉田内閣の中小企業庁長官だった蜷川虎三氏を擁立して当選させ、長らく府政を掌握していたことだってある。政策は水物だし、状況次第で後から変えることだって出来る。長い目で見れば、ここは下地氏を当選させて県政に参加した方が得なのではないか。
 それに直近の利益として、下地氏が知事選に出れば沖縄1区は空席になる。当然補欠選挙となる。この沖縄1区からは共産党からも赤嶺政賢氏が立候補し、比例での復活当選をしている。当然補欠選挙になれば赤嶺氏を擁立することになろう。
 一方もう一人いた公明党の候補は既に引退を表明しており、おそらくは出馬しない。自民党もすぐには候補を決められないだろう。さらにここで下地氏が知事に当選すれば、その見返りとしてそうぞうからの支援も見込める。現在は0である小選挙区選出の共産党議員を出すチャンスになるのだ。
 さらに最も大事なこととして。
 ぶっちゃけ、中央(東京)には「なんだかんだ言ったって沖縄は金握らせりゃだまるだろ」「要するに金が欲しいんだろ」という風潮がある。その金ですら、行財政改革を口実に沖縄への交付を減らそうとしている。次の総理である安部晋三は沖縄になんの思い入れもないから、この傾向をさらに加速させていくだろう。
 そんな状況なのだから、次の知事は中央に強い態度でものを言える人でなければならない。馴れ合いで丸め込まれかねない自民党県政じゃダメなのだ。だからこそ、(現在の)野党陣営は勝てる候補を立てて、何が何でも勝たなきゃいけないのだ。
 革新陣営側には是非再考を求めたいものだ。
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沖縄県知事選2006」への2件のフィードバック

  1. morichan

     初めてコメントとTBをさせていただきます。
     沖縄は戦争と平和の戦う前線基地です。本土を揺り動かす最も重要な拠点です。反自民・公明への打撃をここでする意味は大きいです。革新統一候補の擁立を本土から期待します。
     本土の情けない様相に打撃を加えられる沖縄(世界の危険の縮図)の怒りを票に!

  2. 荒野草途伸

    こんにちははじめまして。県知事選の野党側候補は糸数氏に統一されて、とりあえず安堵しております。まあ個人的には糸数氏には国政で頑張って欲しいという気持ちもありましたが・・・。
    しかし革新陣営は基地以外の、特に経済政策が弱いのはやはりネックですね。折角教員組合もバックについていることだし、職業教育・人材育成を前面に掲げて「人材の沖縄」を作ろう、という発案があっても良い気がするのですけど。少なくとも中央政府依存だけはいい加減脱しなければならないのですから、これはもう基地とか関係なく。
    沖縄が日本経済を支える日が来ることを夢見る荒野草途伸でした。

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