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立憲野党はIT現場に強い


 ↑というタイトルを見ると、「えっ」という人が多いかもしれない。正直、私もこのタイトルを付けるか迷った。今回の参院選の候補を見ても、ITに強そうな人はあまりいない。実務経験のある人は更に希少だ。だがそれでも、「相対的に見れば」他党より立憲野党の方が強いと言わざるをえない。それが現実だ。

 さしあたり、今回の参院選に立候補している中から、3人ピックアップしてみる。

 まずは東京選挙区立憲民主党から松尾明博という人が出ている。
 恥ずかしながら私も参院選告示まで知らなかったのだが、元NTTの技術者で、サーバー運用をしていたらしい。(現在は弁護士をしている。)本物のIT現場出身の候補者だ。

 神奈川選挙区は、共産党から浅賀由香という人が再挑戦している。
 どこに勤めていたかはわからないが、派遣でSEをやっていた期間があるらしい。ITの現場のことは解っている人である。

 比例では、立憲民主党栗下善行という人がいる。
 (今回参院選では何故か表現界隈向け政策を前面に掲げるというトチ狂ったことをしているが、)ORACLEで営業をしていたらしい。技術者では無いが、何もわからんはずはない。でないとORACLEの営業なんて出来ない。

 他にも、業界出身では無くてもITに詳しい候補者はいるし、現職の国会議員にはもっといる。
 ミスター年金で有名な長妻昭だって、NECの汎用機営業出身だ。(NECでSEやってた父親に聞いたら知らないと言われたが。)

 対して、他党はどうか。

 維新はITに強いと思っている人がいるかもしれないが、そんな事は無い。私の中では大阪市役所のシステム障害であたふたしていた印象しかない。3年前の話ではあるが。
 今回参院選で愛知選挙区からKINGSOFTの創業者が出ている(※選挙広報で初めて知った)が、それ以外の候補のことは全くわからない。というか愛知県は減税日本の候補を維新が共同公認しているだけなので、純粋な維新候補では無い。
 こんだけだ。

 自民党はどうか。まあ正直酷いものである。
 ITの現場出身の議員なんて一人もいない。マスコミからIT通とか持ち上げられている議員はいるが、通ぶってシッタカかまして混乱を招いている連中ばかりである。

 デジタル庁という役所が去年発足した。どんな仕事をするのかと様子見をしていたが、仕事の結果云々以前に職員が大量辞職して、挙げ句わずか1年で事務方トップまでやめてしまう事態になってしまった。

 職員が辞めた理由はわからない。だが察しは付く。無能な自民党議員のせいだ。

 デジタル庁は発足前に職員募集を行っていたが、その大半はSEやWebデザイナーと言った現場レベルの技術職だった。大半はシステム開発か、せいぜい上流工程に当たる仕事をする前提で応募した人間だろう。
 ところが自民党は、そんなデジタル庁に「政策立案能力」を求めたのである。
 だったら最初からそういう前提で人を集めろという話である。否それ以前に、デジタル庁は自民党政権肝いりで発足した役所だ。だったら政策レベルの話は自民党で用意するのが当然では無いか。政策立案を役所に丸投げすること自体恥ずかしい話である。

 これが自民党の「IT通」と呼ばれる議員のレベルである。

 更に言えば。誰に吹き込まれたか知らないが今回の参院選で自民党、というか岸田総理総裁が掲げた公約。
「メタバースを含むWeb3の推進」。
 言葉の意味を知っている人間なら、首をかしげずにはいられないだろう。それ以上に、具体的に何をやろうとしているのかさっぱりわからない。それはそうだろう。自民党の連中がなにもわかっていないのだから。

 ちなみにWeb3というのは暗号化技術を使ってPCやスマホ同士でサーバを介さず直接データをやりとりすることで特定の組織に運営を依存しなくてすむWeb技術、という”理念”である。
 その中でメタバース空間を構築できないわけでは無いが、大勢の人間が集まることが前提ならサーバを介した方が効率的に決まっている。Web3である意味が無い。

 更に言うならば。参院選告示前に、大阪の朝日放送がメタバース討論会をやろうとして各党に呼びかけたところ、1党を除いた各党が参加を表明した。その唯一不参加表明したのが、自民党。
 メタバース云々を公約に掲げておきながら、メタバース討論会に対応できる議員が一人もいなかったのである。300人もの国会議員がいながら。

 これが自民党の「IT通」と呼ばれる議員のレベルである。

 ほんと勘弁して。マジ勘弁して。

 こんな政党が権力を握っているようでは、日本はどんどんIT後進国の下り坂を転げ落ちていくだけである。

 つい昨晩、松尾候補者のTwitterスペースで、コロナ対応のデータベースが国と東京都で分かれていて二回入力しないといけないという話が出ていた。データベースを統一するか、分けるにしてもデータ同期するようにすればそんな現場の二度手間はいらなくなるのだが、そうはならないらしい。

 大手SIからすれば、システムが分かれていた方が受注機会は増えるし、他社との協議が必要なデータ同期なんて面倒なことはせずに「現場運用」させた方が目先の利益はでるだろう。
 中には、下手に情報システムに詳しい議員が与党にいるよりも、「神輿は軽くて馬鹿がいい」とばかりによくわかっていない議員をおだてて既得権益を守った方がいい、と考えている人間もいるかもしれない。

 だがよく考えて欲しい。
 そうやって現場の不興を買うようなシステム作りばかりやっていたら、そのうち「DXだのIT導入だの、そんなのいらない!」という声が出かねない。そうしたら、待ってましたとばかりにアナログ老害が嬉々としてIT追放に乗り出してくるだろう。
 軽くて馬鹿な神輿に縄かけて自分の首を吊ることになるのだ。

 IT関係者も、そして関係者で無い人達も、どうかよく考えて今回の参院選の投票先を選んで貰いたい。