安倍自民党政権による、奴隷法案=労働者派遣法改正案 が、先週末衆議院を通過してしまった。
派遣労働者にとっては死活問題であり、また、今後安倍政権が目論む”労働改革”と同じ思想に基づく法改正であることを考えれば、正社員にとっても他人事では無い話である。にも関わらず関心は異常に低く、保守勢力による隠蔽工作も相まって、法改正の内容が全く認知されていないのが現状である。中には、安保法制とごっちゃにしている者までいる始末で(ペルシャ湾派遣とかそういうのだとでも思ったのか?)、本当に頭の痛い限りである。
なので、整理してまとめておく必要がある。
まず、今回の派遣法改悪に至る歴史的経緯を軸に箇条書きでまとめたものを記しておく。
・そもそも雇用は正社員(期間の定めの無い雇用)が原則
・後に専門職の一時的な需給を満たす為に派遣労働が認められた(原則は専門・一時的)
・規制緩和の名の下専門職以外にも派遣を開放、専門性の高い業務は期間制限が無くなった
・企業社会で正社員>派遣の階層化が進む
・家も借りられない派遣労働者が続出し、年越し派遣村などの問題が噴出
・民主党政権下で、緊急措置として「みなし雇用義務」規定が導入、但し自民党の抵抗で施行は3年後に
・今年の10月でその3年が来る
・改正派遣法ではそのみなし雇用義務が実質的に撤廃、他にも部署を変えれば期間制限の穴をすり抜けられるなど派遣の待遇を悪化させる規定がずらり
”派遣会社の正社員”を専門業務派遣する(特定派遣)は派遣期間の制限が無く、特定派遣の廃止に期待する人もいる。が、一般派遣に統合されるだけで派遣先に正規雇用される保証は無し。いづれにせよ、安倍政権はこれらの問題すら議論する気は無く、採決ありき。その結果が先週の乱闘騒ぎ。
この中でもとりわけ重要なのが、「みなし雇用義務の実質的な撤廃」である。
これを理解するために、派遣労働者には現在4種類ある事を理解して貰いたい(ここがそもそもいろいろ混同されている)。
まず、業務内容により2区分
・専門26業務(派遣期間の制限無し)
・自由化業務(3年の派遣期間制限がある)
そして、派遣事業者との雇用形態により、2区分。
・特定派遣(派遣事業者と正社員雇用の関係にある)
・一般派遣
以上の組み合わせで、4種類。
今回の法改正で、「特定派遣」は廃止になるため、法改正が施行されると「専門」とそれ以外の2種類に統合される。
ここで注意しないといけないのは、特定派遣が無くなっても専門26業務の派遣期間は制限無しで変わらない、という点である。言い換えると、3年経とうが何年経とうが、違法では無い、ということである。
また、自由化業務についても、部署を変えて”厚生労働省令で定める手続き”を踏めば、派遣期間は延長できることになる。この”厚生労働省令で定める手続き”とは、労働組合または社員代表から意見聴取を行うこととなっている。また、この”厚生労働省令で定める手続き”は、行わなくてもみなし雇用義務の適用対象外とされている。
みなし雇用義務とは、直接雇用義務などの派遣受け入れの法令を派遣先企業が守らなかった場合に、自動的に労働者と派遣先企業の間に雇用契約が発生する規定である。(参考:allabout/派遣法改正の目玉!?「雇用みなし」とは?/更新日:2012年05月28日)。野田政権下の2012年に導入されたが、今回の安倍政権による法改正では上述のように派遣期間制限に係る部分が実質的に無効化されている。
政府側の主張としては、「今年の10月にこの規定が施行されると、その直前に派遣契約を打ち切る”雇い止め”が続出する恐れがあるので、規定を変える」というものである。しかしこれは、強姦罪をそのままにしておくと強姦の口封じの為の殺人が発生するので和姦で免罪される道を幾つか作ります、と言っているようなものである。
改正成立前と成立後の違いを図にまとめた。
改正前
改正後
安倍政権による派遣法改悪がどういうものか、おわかりいただけただろうか?