──書き換えることが出来るだろうか。日本人の、その常識を。


 出来れば思い出したくないし忘れるように努力しているにもかかわらず周りの言動によって強制的に思い出させられてしまう日というものがある。2月14日など、その最たる例であろう。
 12月24日は、我々鍵っ子にとっては「キムチラーメンを食べる聖なる日」であり、そういう意味では忘れてはいけない日なのであるが、しかし、別の、間違った定義を強制的に思い出させられてしまうことが往々にしてある。
 ここで笑って返してしまうのは、日本人の悲しい性と言えよう。欧米人やムスリムなら、己の信念を書けて議論をふっかけるところである。
 …昔は自分もそのくらいの気概はあったんだがな。鍵っ子として弱くなってしまったということだろうか。
 そんな事は置いといて、今年の12月24日は「Rewrite予約開始日」が重なるという、二重の意味で忘れてはいけない日なのである。
 そんなわけで、今日は帰りがけに大須でRewriteの予約をしてから、尾張瀬戸駅のラーメン屋でキムチラーメンを食って帰った。
 Rewriteの予約は、ゲーマーズとGoodwillどっちにしようか迷ったが、ゲーマーズは何か混んでてめんどくさそうだったので、Goodwillにした。GoodwillならEdyも使えるしね。
Rewrite予約票
 沖縄にいたらGoodwill北谷店で予約したんだろうなあ、年百万の不労所得を得られるようになって沖縄に戻りたいなあ、でも年百万じゃギャルゲー買うの厳しいかなあ、とか現実的なんだか非現実的なんだかわからない願いを心に巡らせながら、店外へ。
 店を出たら、ちょうど矢場町から瀬戸駅前行きのバスが出る時間と合っていたので、それに乗って帰ることにした。ら、30分以上も待たされた。起点の名鉄バスセンターから停留所3つしかないのに、何でこんなに遅れるんだか。しかも後から来るはずの三軒屋行きが先に来るとか。どうなっとるんだ。しかも新出来町でその三軒屋行きのバスが故障して動かなくなってたし。
 道が混んでいたのでバスだと電車の倍の一時間半かかったが、しかしおかげで参考書がかなり読み進められたのでよかった。電車やバスの中だと勉強がはかどるのは何故なんだろう。但しクロスシートに座ったときに限る。だからロングシートしかない地下鉄名城線は使えない。て言うか名城線なにげにループしないし。大曽根か矢田か名古屋港で止まっちゃうから、一日中乗ってられないし。全然関係ないがトランパスあと2ヶ月で販売終了てどういうことだ。マナカとか、鍵っ子の俺には全然関係ないし。
 瀬戸駅に着いて図書館で本の手続きをしていたら、ちょうど目の前で帰りのバスが出てしまった。…まあ、どのみち駅ビルのラーメン屋でキムチラーメンを食べる予定だったからいいのだが。…コンビニでカップ麺とキムチを買って帰るという選択肢もあったのだが。
 キムチラーメンは、まあそれなりの味だった。本来台湾ラーメンの店だから、そこはあんまり期待しちゃいけない。どうでもいいが、何故名古屋人は台湾とかナポリとかベトナムとか、中京圏と全然関係ない地名を食べ物に冠したがるのだろう。
キムチラーメン
 食べながら、「七瀬留美の偉いところはちゃんとラーメン全部食い終わってから店を飛び出したところだよな」等と考えていた。普通は、感情的になって食べずに店を飛び出すか、泣きながら食べてそのまま居続けるかのどちらかである。
 勘定を済ませて店を出たら、既に帰りのバスが止まっていた。あと1分出るのが遅かったら、三十分待ちさせられるところだった。
 帰りのバスの中で、ふと気づいた。
 折原浩平は毎年12月24日にキムチラーメンを食いに行っているが、必ず「女の子と一緒に行っている」のである。つまり、12月24日に取るべき正しい行動は、「男一人でキムチラーメンを食べる」のではなく、「誰でもいいから女の子と一緒にキムチラーメンを食べる」なのである。
 この歳にして、とんでもない間違いに気づいてしまった。しかしこれは、改めろと言われて簡単に改められるものではない。日本社会の常識は未だ「12月24日は恋人同士で過ごすのが最良である」という間違った認識に支配されており、「誰でもいいから異性とキムチラーメンを食べる」という方向に向かう気配は全く無いからである。
 ──書き換えることが出来るだろうか。私の、この運命を。
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