連休初日の四月病


「そうだ。神戸、行こう。」
そう思い立ったのは、昼の0時を回る少し前のこと。眠りから目覚め、曇り日の薄暗い光を認識したときだった。今日ではない、明日。明日、神戸に行ってみようか。そんな思いに駆られた。
 JR東海がこのCMを流していたのは、もう何年前のことになるだろうか。否、あれは神戸ではなく京都だったか。そう思いながら、何故か枕元にある時刻表に手を伸ばす。料金表。弘済会版とJTB版では、微妙に記載内容が異なるが、料金表の内容は同じもののはずだ。博多−新神戸、9030プラス5240イコール14270円。往復だと28540円。高い。思考の間断無く、そう思った。
 新幹線を使わなかったらどうだろう。在来線のみ、普通と快速のみを使うと、博多駅を朝一番で出ても三宮着が16時30分。あれがいつ終わるのか知らないが、着いても意味のない時間だということはわかる。高速バス。往復で1万8千円。早朝に大阪に着ける。が、貴重な夜の時間を、バスという劣悪な環境下で過ごすことになる。二晩も。それは耐えられない。航空機。前日までの予約なら、片道1万1千円。しかも早い。
 これで行こうか。しかし、そこで迷いが出た。連休とはいえ、休みは三日間のみ。いくら飛行機で行くとは言っても、そのうちの一日がつぶれることになる。延べ三万円近くも出して。しかも、目的は一カ所のみ。ワンセットのカードゲームのために行くことになるのだ、結果としては。
 「かおりくいさんが出たら、行こう。」そう決めた。500円ガチャガチャフィギュアなるものが何であるのか、知らない。どこにあるのかすら、知らない。それでも、私は明日の運命を、その人形に託すことにした。天神にアニメイトがあると聞く、そこに行けば彼の物はあるのだろう、そう見切りをつけた。
 天神を歩くこと40分。無い、見つからない。アニメイトが。親不孝通りと呼ばれるその場所にアニメイトはあるはずなのだが。駄菜屋とかいうしなびた野菜を売っている店はあったが、そんなものはどうでもいい。歩き続け、いい加減疲れてきた私の右足が、突如重くなる。見ると、右足の靴が破れていた。これでは神戸に行くのは無理だ、そう悟った私は、引き上げることにした。
 新聞は今日もきていなかった。今月に入ってから、毎週土曜日は来ない。4時を回っていたが、かまわず新聞店に電話する。二十歳かそこらと思われる男が届けにきた。彼の担当だったのだろうか。強く生きろよ、何故か怒る気にもなれず、そんなことを考えていた。
 
 

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