非常事態



 自分は、よくチョコを買う。甘党ということもあるが、主な目的は「非常食」としてだ。非常食というと一般的には地震水害クーデターといった「非常事態」時のために取っておく食料のことをいうが、自分の場合、「胃腸の調子が悪い」「360秒以内にカロリー補給をしなければならない」といった事態も含まれる。というか、そっちの方が多い。
 で、そのチョコだが、たいていの場合、買って3日ほどでなくなってしまう。つまり、しょっちゅう非常事態というわけだ。こんなに非常事態が続くと、もうこれは「非常」ではなくて「常」な気もするが、これを認めてしまうと自身のあいでんちちいを書き換える事態になったりしていろいろ面倒なので、認めない。
 認めないという以上、非常事態は解除、つまり常の方向に持っていくようにしなければならない。しかしそれがなかなかできないものだ。何しろ、非常事態というのはこれがなかなか便利なもので、意外と抜け出せないものなのだ。普段は平穏に授業をしている大学が、祭りとなると急速に活気づく。その準備をする学生たちは、口ではきついつらいといいながら、心の内では永遠にこのときが続けばいいのになどと願っている。それとよく似たものかも知れない。人は刺激を求めて命さえ危険にさらす生き物である。「常」が嫌いな生き物なのだ。だからこそ、地球上で他に類を見ない高度な文明を気づくことができたのだ。あながち悪いことではないのかも知れない。
 日本の景気が、回復軌道に乗っているらしい。まあ、半年ぐらい前から、何となくそんな感じはしていたけど。日本経済も、ようやく非常事態から常態に移行するといったところか。しかし、その歩みは以前遅々としているともいう。まあ、そりゃそうだろう。何しろ、みんな心のどこかで、今の「不景気」が続くことを願っているのだから。だってこのまま不景気が続けば、物価は安くなるし、労働コストは抑えられるし、貿易黒字出しても文句いわれないし。少なくとも経営者サイドにとっては、悪くない話だ。つーことで、この国の非常事態はしばらく続く。で、経済の非常事態が終わったら、つぎは軍事的非常事態だ。何しろ、人間は非常事態が大好きなんだから。
 


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