家族の肖像


 「今夜の夕食」をきちんと読んでいる人ならわかると思うが、自分は現在、日本国内某所に潜伏中である。いや別に、知らなくたって問題はない。その方がしあわせ、ということだってある。
 でまあ、何処に潜伏しているかと言えば、要するに親元である。ここまで正直に事実を話すようになったのだから、自分も昔に比べるとずいぶんと柔軟になったものだ。いや、俗化したと言うべきか。
 自分は某国立大に潜入して以来、毎年、春と夏に潜伏生活を送ることにしている。大学に籍を置いて結構な年月が経っているから、帰郷回数もそこそこの数になる。列車で帰ることが出来ないからいつも飛行機の手配に苦労したりしているわけだ。一回だけ船で帰ったことがあるが、時間ばかりかかってなんにもおもしろくない(特に安いというわけでもない)ので、やっぱり飛行機で帰っている。
 そういうことは、この際どうでもいい。帰郷が始めてではないと言うことさえ頭に入れてもらえればよいのだから。で何が言いたいかというと、今回自分は、初めて「ああ実家っていいな」などと考えたのである。
 まあ、理由はいろいろあるだろう。向こうでやり残してきたことがない。まあ、ほんとは在るんだけど、全部ほっぽりだしてこっちに来てしまった。そういうわけで、戻ったら部屋を片づけなければいけないし研究室の争奪戦に参戦しなければいけない。あ、やること結構あるや
 まあいい。この際理由なんてどうでもいいだろう。感情に理由は付けられ無いとも言う。そう、これはいわゆる家族愛という奴だ。すばらしいことではないか。世界平和の源だ。人類みな兄弟、死ぬときは一緒だ。
 しかし、こう考えているのは自分だけで、周りのヒトタチはそう思っていないかもしれない。実際、何もしないで寝てばっかりだし、自分が帰ってきたとたんHDがいかれて買い換え、という羽目になった。「こんにゃろー」ぐらい思っているかもしれない。うん。まあいいけど。良くないかもしれないが。
 でまあ、そういうこととは関係なしに、私はあと数日で某島国に帰ることになる。多分。ということで、今日はこれでおしまい

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