一億二千万人の憂鬱
どうでもいいことだが、今私はVB(VisualBASIC)の勉強をしている。ここで言うどうでもいいというのは、今日本中に生息している一億二千万余の人間の大半にとってどうでもいいという意味である。大半といったところで要するにそれは現在の日本の人口−1という数以外の何者でもないではないかという意見もあるだろうが、それはすなわち私以外の人間が私の行為に意義を感じていないと言うことになり、それではあまりにも悲しすぎるからせめて二、三人は「どうでも良くない」と思っていることにする。
さて前置きが長くなったが、私はVBの勉強をするために大学生協で本を買うことにした。大学の生協というところは実用書とか学術書とかいう物は充実していると思うかもしれないが、実際のところそうでもない。コンピュータ関係はさすがに最近ブームになっているだけあってそこそこの品揃えはあるが、それ以外の実用書なんてほとんどない。何故無いかというと、だれも買わないからだ。これを取ってみても。某国立R大の程度がしれるというものであろう。
そういうわけで、生協にとりあえずコンピュータ関係の本はある。VBの本もある。そう、あるにはある。が
ここであらかじめ断って置くが、私はBASICという言語を全く知らないわけではない。往年の名言語N-BASIC(N88でもN80でもない)なら大体使えるし、授業でQuickBASICもやった。つまり、BASICならまあ大体のことはわかっている。逆に、VBの事は何も知らない。つまり何がいいたいかというと、私が探していた本というのは、「BASICの文法とかはどうでもいいから純粋にVBの機能的解説に絞った本」なわけだ。
で、そういう本があったかというと、無かった。ど素人向けに懇切丁寧に解説してある本か、逆にばりばりのユーザー向けにかかれた分厚い辞書みたいな本しかなかった。VBの事を何も知らないのにばりばりな辞書を買ってもわけわからないから、仕方なく素人向けの本を買ったが、はっきり言って丁寧すぎて読みづらい。しかも、「素人向け」ということか、使われる関数が異常に少ない。同じBASICでも関数の使い方などは結構違っていることが多いので、こういうことはきちんと確認しておきたかったのだが、載っていないのではどうしようもない。(まあ、このへんはVBのヘルプで参照できたから良いのだが)
さて、ここで問題だ。世の中には、私のような人間はいない若しくは少ないのだろうか。BASICのABCも知らないど素人か、VBを少しは使ったことのある上級者か、どちらかしかいないのだろうか。そんなことはないだろう。仮にもBASICというのはかつてはOSとして使われていたほどのシロモノだし、今では高校の数学でもBASICをやっている。しかし、教育用に使われているのはU-BASICであって、決してVBではない。VBの基礎的知識がある人というのはまあ大体MS-OFIICE製品のユーザーで、決して少ない数ではないが特に多いというわけでもないだろう。まとめてみると、世の中のコンピュータユーザーの中で
1.BASICを全然知らない人
| (初心者)
|
2.BASIC知ってるがVBは知らない人
| (中級者)
|
3.VBをある程度は知っている人
| (上級者)
|
というのは大体同数と考えられる。1.は少し多いかもしれない。少なくとも、2<3ということはないだろう。
ところが、世の中には2.の人を対象にした本がないのだ。いやあるかもしれない。しかし、店頭に出ないほど少ないということはないと同じだ。
何もVBに限った話ではないだろう、これは。他のソフトでも、パソコン本体でも、AV家電でも台所用品でも衣料品でも言えることだ。「中級向け」「中間サイズ」というのが実に少ない。そもそも、日本という国は「一億総中流」といわれるくらい「中間」好きの国民性が特徴なのに、何故こうなるのだろう。こと政党に関しては、ありとあらゆる政党が同じ事を言うようになって「総中級化」していると言えるかもしれないが、あれはそれ以前に国民から遊離しているからパス。
いや、確かに日本人は中間・中級好きだ。しかし、現実にこういう中間好きが優遇された試しがあるだろうか。私の記憶の限りでは、無い。いやそれどころか、中間は何かと搾取される傾向にすらある。「中間管理職の悲哀」などという言葉があるくらいだ。最近この言葉も聞かなくなったが、これは日本中に吹き荒れたリストラの嵐で中間管理職が淘汰された結果、残った中間管理職は悲哀を感じる暇もないほど猛烈に働かされているためだ。結局のところ中級がいじめられている事実に代わりはないということか。
日本人の中級好きというのは、結局のところ闘うよりも妥協を選ぶという国民的気質に依存しているのかもしれない。そういうことであれば、自分たち「中級者」がどんなにいじめられても、結局のところなにもいわず妥協を選んでしまうのも頷ける。こんなだから中級の地位はいつまで発っても向上せず、十分な恩恵は受けられないままなんだな、結局のところ自分は自力でVB修得しなきゃいけないんだ、という結論を得て私はこの文書を保存する。
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