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恋愛NEET

 
 NEETというのは「Not in Education,Employment,Traning」の略で、教育も就職も職業訓練もしていない人のことを指す造語であるが。この言葉をもじって「Not in Education,Engage,Traning」としたものを「恋愛NEET」と呼ぶことにする。
 
 
 さて。blogの方で2/24にときメモOnlineについての記事を書いた。ここ書いているように、荒野草途伸自身はときメモシリーズはやっていないのであるが。学生時代の知り合いに、このときメモシリーズにとことんはまりこんでいた男がいた。
 
 とにかく、ときメモづくしの男であった。
 それまでに出たときメモシリーズは当然全て買いそろえ、それをやるためだけにゲーム機本体も買う。聴く音楽はときメモのサントラ。持ち歩く小物も文具も、全てときメモ関連商品。部屋も車もそういうので埋め尽くされている。サークルの会誌に寄せる言葉は「殺人コアラ」(ときメモに出てくるキャラの一つで、人の家の庭に勝手に住み着いて隙あらば殺そうと狙っているコアラ、らしい)。実在の女の子と会話する時も、「今の話題は結構ヒットした。好感度が50ぐらい上がったはずだ」等と言い出す始末。
 
 そんなだから、周りからは「あいつにだけは(実在の)彼女が出来るはずはない」と言われていた。
 
 ところが、3年生になった時。彼が、同じサークルにいた銀行の支店長の娘と交際していることが発覚したのである。周りの反応は正に驚天動地。阿鼻叫喚の地獄絵図と言っても良いほど酔ってくだを巻きまくっていた者もいた。
 そんな大混乱の中、私は思ったのだ。
「例えゲームでも、訓練を積んだ人間は違うのだなあ」と。
 
 
 さて。実際の所、訓練を積んでいない、恋愛未経験の人間が恋愛をするのは非常に難しい。これは恋愛に限らず、どんなことでも訓練無しで何かをするのは難しいが、恋愛の場合特にそれが顕著である。
 しかも、恋愛というのは多くの場合誰かが教えてくれるわけでもなく、公教育のプログラムにも組み込まれてはいない。自力習得するしかないものだ。これが問題をより深刻にしている。
 
 未経験といっても、若いうち、というか10代くらいだと、お互いが未経験なせいか、ろくな訓練が無くても意外とうまくいくことが多い。あとで分かれることになっても、文字通り「良い経験になった」と言えることであろう。
 
 だが、若い時にこういう経験が出来るとは限らない。そして歳をとってくると、だんだん未経験ではうまく行かなくなってくる。熟練者と未経験者の差が、どんどん大きくなっていき、埋めようのない溝へと発展していくのだ。
 熟練者の中には「経験のない奴との恋愛なんてお断り」と言いだす人も現れる。また当の未経験者自身も、同年齢と同じレベルの恋愛(実際の同世代での恋愛水準を平均化したものではなく、マスメディアや他人との会話で言われるような「標準的な」恋愛)をしたいと考えて、相手に高いものを求めがちになる。当然、訓練を積んでいないとその要求には応えがたい。
 こうして、未経験者は恋愛の機会を奪われていく。機会がないから、当然訓練の蓄積も為されない。蓄積がないから、ますます相手にされなくなる。このような悪魔の循環の繰り返しで、恋愛未経験者はどんどん厳しい状況に追い込まれていき、そのうち恋愛というものが手の届かない高嶺の花になってしまうのだ。
 
 こうして、恋愛NEETは形成されていくのである。
 
 本物のNEETと違って、恋愛NEETが増えたところで社会全体に及ぼす悪影響は、実はそんなに無いのかもしれない。税収が減るわけでもないし、「恋愛=結婚=出産」という図式が既に過去のものとなっている以上、この問題を解決したところで少子化が止まるわけでもない。
 だからこそ、一般の教育プログラムに恋愛は入らないのだ。
 
 だが社会抜きに個人の立場で考えれば、これは結構深刻な問題である。「恋をしたら負けかなと思っている」などと本気で考えている人は少ないだろう。だがそう自分を納得させる以外に術を持たない、そんな状況に追い込まれている恋愛NEETは、今も増え続けているのだ。
 
 循環を断ち切る方法は、確かにある。一つには、恋愛NEET自身ががむしゃらに恋愛に突っ走り、なりふりかまわず訓練を積んでいく、というものもあるだろう。
 だがしかし。これとて決してそうそううまくいくものではない。「あなたのことは全然好きではないのだけど、訓練のためにお付き合いしてください」などと言おうものなら、相手にされないどころかはり倒されかねない。
 そもそも、がむしゃらに恋愛に走るという行為自体が、出来ない人間が多いではないか。それが出来れば、初めから苦労はしないのだ。
 
 
 
 自助努力には限界があり、しかし公的な支援も期待できない。恋愛NEETの問題は、実は非常に根が深いのである。
 
 
(blog3/16記事に加筆)
 
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